「組織と変化」に関する苦い思い出
2019年6月4日

私は1991年、社会人としてのキャリアを大企業でスタートしました。就職活動を行った時期はいわゆるバブル景気の最後の年で、世間はまだ、浮ついた空気に満ちていました。私は自分自身や企業の分析をあまりせず、友人の意見やマスコミ情報に流されるまま、大企業というだけで就職先を決めたものでした。しかし、おかげで良くも悪くも組織の様々な面を見ることができました。入社した初日から新入社員が一堂に会し(私の入社時は、同期が1,000人以上でした)、社長、会長、相談役の講話に始まり、グループに分かれて社会人としてのマナー、コミュニケーション、リーダーシップ、役割分担などの研修を受けました。その後、配属先の職種ごとに営業実習や工場実習があり、正式に職場に配属されたのは6月になってからでした。その2か月余りでしていたことは、一言で言うと、「社会人として、組織の中でどうふるまうか」を叩き込まれていたのだと思います。

 

後に経営コンサルタント(中小企業診断士)として開業し、中小企業のお客様とお付き合いすることになって感じたのは、大企業と中小企業の大きな違いは、「組織として動く仕組み」があるかどうかという点でした。大企業は組織として仕事を進める方法が浸透しており、社長や経営トップが直接指示を下さずとも業務を回していくことができます。一方、規模の小さい(例えば数十名程度の規模までの)企業では、社長が各業務に対して一々指示を出しているところも多いようです。小回りがきく面はありますが、業務を効率的に行い、事業を拡大するためには、いずれ組織化を行う必要があります。
とは言え、大企業の組織が理想的かというと、必ずしもそうではありません。私のいた会社では、2010年頃から経営が目に見えて悪化し、2012年には希望退職の実施、その後は経営トップが大きく入れ替わるという事態がありました。思い起こせば変化の兆しは2000年代半ばには現れていました。営業部門はお客様のニーズが変わったと報告していたし、技術部門は競合企業の開発能力が向上したことを知っていました。また生産部門では製品在庫の増加が話題になるなど、それぞれ現場レベルでは変化を把握していました。それがトップへ情報として適切に伝わらなかった、もしくは伝わっても対応するべき情報として捉えられなかったようです。本来なら、変化に応じていち早く経営の方向を変え、戦略や組織を組み直す必要がありました。それが遅れたのは、大組織になったために個々人の当事者意識が薄れ、経営トップも健全な危機意識を持てずにいたためかと考えます。
さらに、経営状況が目に見えて悪化した頃には、組織の弱さが表面化しました。もともと事業が順調な時期に拡大した組織であったため、多くの社員が成功体験だけで育っていました。急速に悪化する環境で起こったことは、目先の対症療法へのこだわり、責任の回避、情報の囲い込みなどでした。一気に社内の雰囲気が悪くなり、社員は内向きになり、組織の結束は弱くなりました。

 

今、私は経営コンサルタントとして、お客様の組織作りに関わっています。組織の形を作ることと並行して重要なのは、経営環境が変化したとき(必ず変化は起こります)、その兆候をいち早く把握して、会社全体として自己を変革できる組織になることです。組織が肥大化した大企業に比べ、規模の小さい中小企業はより早く変化への対応が可能です。私は大きな組織での苦い思い出を反面教師とし、変化に強い組織を作るお手伝いをしたいと考えています。

加藤慎祐氏の写真

加藤 慎祐

Shinsuke Kato
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