ポジティブな職場風土に変える「ビジョナリー・リーダーシップ」
2020年12月1日

 人生や仕事に対して、どのような価値観や考え方を持つかは人それぞれです。しかし、企業など組織で働く場合、少なくとも仕事に関しては所属する組織の価値観と個人の価値観を整合しなければなりません。人は無意識のうちに、この整合作業を行っていますが、整合の精度は人によって千差万別です。それぞれのベクトルもあちらこちらと向きが違っています。だから、管理者はメンバーをまとめるのに苦労することになります。

 

 もし組織(チーム)の管理者から、「チームのミッションを達成するために、私はこういう思いで、こんなところにこだわって、こういうふうにやっていきたいと考えている。君も一緒にやらないか」などと声がけされたらどうでしょうか。メンバーは「やります」と答えるだけで組織の価値観と個人の価値観の整合ができてしまいます。目標、ビジョンだけでなく、アクションプランなど具体的なことの共有もできるので、メンバーは仕事の「やりがい」や「楽しさ」を見つけやすくなります。組織(チーム)的には、メンバーが目標・ビジョン、アクションプラン等を共有するのでベクトルが合致し、相乗効果を発揮しやすくなります。このように、仕事の価値観やこだわり、ありたい姿などの思いを語り、メンバーの賛同を得るマネジメント、つまり、メンバーの気持ち(=マインド)を引っ張るリーダーシップを「ビジョナリー・リーダーシップ」と言います。

 

 やらなければならない理由や状況を説明され、異議を唱える余裕を与えられることなく仕事を割り振られて、仕事の分担が決まった後はしっかり進捗管理をされる。このような管理者の下で仕事のやりがい・楽しさを得るのは、なかなかに難しいと言えるでしょう。現に「割り振り・進捗管理型」の管理者がいるメンバーのモチベーションは低く、「ビジョナリーリーダー型」トップ下のメンバーは元気な場合が多い傾向にあります。

 

 ビジョナリー・リーダーシップを発揮するには、自分の「思い」「価値観」「こだわり」等をメンバーに丁寧に語り、賛同を得ることが必須です。そして、語る「思い」や「価値観」には、守らなければならないいくつかのポイントがあります。まず、法規範や倫理規範(世の中の常識)に合致していること。そして時代のニーズに適合していることです。また、企業の一部署である場合は、全社や部門の方針からずれることもできません。

 

 特に、働き方改革の本質を理解できず、フォア・ザ・チームを強要し、「チーム一丸となってがんばるぞ!」という昭和的な「思い」や「こだわり」を押しつけている事例が散見されるのは残念なことです。これではメンバーはついて行けず、組織(チーム)も力を発揮できません。人生の中で膨大な時間を費やす「仕事」が辛く我慢するものでしかないならば、幸せな人生は歩めません。「仕事」の中に「やりがい」や「楽しさ」を見つけることが重要です。メンバーが「やりがい」「楽しさ」を見つけられるような「思い」や「こだわり」であることがビジョナリー・リーダーシップの最大の成功要件と言えるでしょう。

西嶋 衞司

Eiji Nishijima