変わるということは、新しい未来を手に入れること
2019年7月3日

前回の私の「個人的な体験」の最後に記したとおり、私の場合、変わることができてとても良かったと思っています。変わることによって、私は今の人生を手に入れることができました。もちろん、今の生活がどれだけ幸せかということを客観的に把握することはたやすいことではないでしょう。私は2008年に会社を退職して経営コンサルタントとして独立したのですが、当時は前の会社にしがみつくという選択肢もありました。
しかし、それまでに見慣れた風景に大きな違和感を覚えるようになるとともに、新たにやりたいと思えるものを見つけることができるようになっていました。だから、新たな道に進むこと、つまり変わることは至極自然なことと思えていました。
この体験から、私は、「変わるということは、新しい未来を手に入れること」だと確信しています。今回は私の個人的な体験をもとに例を挙げていますが、これは企業の経営でも間違いなく言えることだと思います。

人や生き物が成長し、新しい未来を手に入れるように、企業や組織も変わることによってしか、新しい未来を手に入れることはできません。この原則を理解されていない経営者が多いのではないかと思います。
逆に言えば、これまでと同じことを繰り返しているだけでは、緩慢な死を迎えるだけです。

ここで、「そうは言っても、老舗企業がたくさんあるじゃないですか。」という声が聞こえてきそうです。つまり、老舗企業は古いものを大事にしているからこそ、繁栄しているのだとする意見です。
しかし、老舗企業について研究した「100年続く企業の条件」(帝国データバンク)によると、「創業時から一部もしくは全部変えたもの」として、78.7%の会社が「販売方法を変えた」としています。さらに、「商品・サービス」を変えた会社が72.4%、「主力事業の内容」を変えた会社が56.3%となっています。

ここから、老舗企業といえども、事業の大きな軸を大きく変えながら暖簾を守り続けていることがわかります。
さらに「今後も生き残るために必要なこと」の第1位は「信頼の維持向上」ですが、第2位に挙がっているのは、「進取の気性」となっています。

先に私は、「老舗企業と言えども」と書きましたが、むしろ「老舗企業だからこそ、新しいことに取り組むことの大切さが身に染みてわかっている」ということではないでしょうか。
つまり、変わることを繰り返してきたからこそ、老舗企業と呼ばれるほどの長寿企業になったのではないかと思います。逆に言えば、変わることができなかった企業は、市場から退場せざるをえなくなってしまっているのでしょう。

伊藤 康雄

Yasuo Ito